住宅ローン控除と消費増税

 不動産業に十余年携わっていましたが,当時は未だフラット35なんていう商品はなく,住宅ローンは公庫・年金が主役,固定金利が当たり前,変動金利はなんだか危なっかしいね,そんな時代でした。ちょうど大手金融機関が1%台の低金利変動ローンを出し始めた頃でしたが,利用は少数。どうしても返済比率が合わないとか,自己資金が足りないとか,そんな特別の理由のあるお客さんに対して,ある意味仕方なく提案する,という商品でした。

 ところが,10月28日付日経新聞朝刊の記事によると,現在は変動金利型住宅ローンの利用率は57%,過半数に上るとのこと。低金利時代の影響もあるんでしょうが,んー,時代は変わったんだなーとしみじみ感じました。確かに「将来の安定と今の生活負担,どちらを優先すべきか」と聞かれたって「こっちに決まってる」とは断言できません。難しいトコロです。

 住宅関連のお話でもうひとつ。
 来年10月の消費税率の引き上げにあたり,政府は住宅ローン控除の期間を延長する方針で検討を進めています。住宅ローン控除とは,住宅ローン年末残高の1%相当額を所得税などから差し引くことができる制度で,減税のインパクトがかなり大きいことから住宅購入の大きなインセンティブになっています。土地売買には消費税はかかりませんし,消費税課税事業者ではない個人が売主の中古住宅売買にも消費税はかかりませんが,リフォームローンでも要件を満たせば住宅ローン控除を受けられるので,新築・中古いずれの住宅購入にとっても大きな動機付けになります。

 で,これから来年の消費増税前にマイホームを買っちゃおうという「駆け込み需要」が予想されます。これまでの増税でもありましたし,今回もきっとあるんでしょう。それはそれで悪いこととは思わないんですけど,売る方も買う方も,とにかく急ぎ足になりがちなのが宜しくありません。
 「こんな物件が良い」「こんな物件は買うべきではない」ということではなく,その物件の内容や権利関係,現在や将来のリスクを十分理解して,納得して買う,ということが重要です。言うまでもありませんが,服や家電を買うのとは違って「んー,気に入らないから買い替えちゃおう」と簡単にはいきませんから。

 当事務所では,売買契約書などの書類のチェックを承っています。特に,不動産・建設業界は情報の非対称性が顕著で,重要事項説明書の内容も一般の方には馴染みの薄い専門用語の記載が多いことから,理解が難しいと感じていらっしゃる方も少なくありません。セカンドオピニオンとしてお気軽にご利用ください。