単身高齢者と空き家問題

 一人暮らしの高齢者が急増しています。
 11月26日付日経新聞朝刊によると「日本経済新聞が国勢調査を分析したところ,三大都市圏(1都2府5県)は2000年以降の15年間で(単身高齢者が)2.1倍の289万人に達し,15年に初めて世帯全体の1割を突破した」。記事では,老人福祉費や生活保護費などの扶助費の増加等,単身高齢者を支える自治体の負担が重くなることに警鐘を鳴らしています。

 現在は空き家の増加も全国的に問題となっています。平成25年統計における全国の空き家率は13.5%,山口県は全国ワースト8の15.6%。何と,6軒に1軒は空き家です。倒壊の危険や衛生・景観の問題だけでなく,犯罪の温床にもなりうる空き家問題。所有者だけの問題ではありません。
 空き家が生まれる原因は種々ありますが,大きな原因の一つに「単身高齢者・高齢者夫婦のみ世帯の増加」があります。同居家族のいない高齢者が施設等に入り,引き取り手のない自宅がそのまま空き家になってしまう,という構造です。売るにも貸すにも譲るにも壊すにもそれなりの労力が必要ですので,これから施設に入ろうという高齢の方々にとって自宅の処分は難儀なものでしょう。ましてや,認知症など判断能力が不十分になってしまってからの処分は一気にハードルが上がります。
 平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。「特定空き家」に指定されると固定資産税などの税金も上がることとなり,精神的にも経済的にも大きな問題です。

 空き家を発生させない方法として成年後見制度や家族信託などの利活用があるんですが,個人的には,なんかこう,「家を放ったらかしにするのって勿体ないよね」「こんな風に使えばみんな喜ぶのに」的な,「言われてみればそうだねぇ」「んじゃ,そんな風にしてみよっか」的な,そういうコンセンサスが広まればなぁと思います。法律家らしからぬ物言いかも知れませんけど,成年後見や家族信託なんて,使わなくて済むものなら使わない方がいいんですから。
 行政書士・宅地建物取引士として出来ること。これからの課題です。