不動産の所有権放棄・遺産分割協議の期間制限

「土地の相続登記 義務化」

昨日2月8日付日経新聞夕刊1面にドーンと出てました。

法務省が発表した内容によると,所有者不明の土地が増えている問題を解消するため,民法と不動産登記法を見直すとのこと。
所有者不明土地は土地利用の障害となっています。ただでさえ国土の狭い日本ですから,土地の有効活用は喫緊の課題です。相続登記の義務化は空き家対策にも有効かもしれませんね。

 さて。
 今回の法改正案を眺めてたんですが,その中に「所有権の放棄を認める制度の創設」があります。

 所有権の放棄。なんと。

 民法239条2項は「所有者のない不動産は,国庫に帰属する。」と規定していますが,実際に所有者のない不動産にお目にかかるのは相続放棄のケースくらいしかありませんでした。なので,不動産の所有権放棄といわれても「え?不動産の所有権を,放棄?」って感じで全くピンと来ません。どんな制度になるんでしょう。
 こりゃ法改正にも時間がかかるんじゃ…と思ってたら,山下法相は「2020年の臨時国会に改正案を提出したい考え」(同記事)だそうです。来年ですよ来年。

 そのほか,相続人同士が遺産分割を話し合いで決める(遺産分割協議)期間にも制限を設ける方針らしいです。
 今は遺産分割に期間制限はありません。実際,被相続人が亡くなられてからン十年後に遺産分割協議がなされることも珍しくありませんが,だからといって遺産分割しないままで問題がないか,というと,そんなことはありません。
 相続登記が何代にもわたって放置されていると,いざ遺産分割協議をしようとしても相続人が指数関数的に増えていて,相続人を確定させるだけでも大変です。
 やっとの思いで相続人が確定して,全員で協議しようと思っても,今まで会ったこともない「誰だおまえ」的な相続人と協議がスムースに進むのは稀です。いきなり見ず知らずの相続人から遺産分割調停を申し立てられたケースも過去にありました。
 いや,相続人全員と連絡が取れればまだマシかも知れません。相続人が増えれば増えるほど,連絡が取れない相続人が出てくる可能性もドンドン高くなります。そうなったら遺産分割協議すら出来ません。

 そんな事情もあっての期間制限なんでしょうね。
 いずれにしましてもみなさま,相続が放置されている物件がありましたらお早めに。