改正業法・入契法の運用の方向性・5/現場技術者、兼任制度や負担軽減策が年内施行
建設現場で遠隔臨場などのICT活用が急速に進展し、現場技術者の働き方や管理手法が変化してきている。改正建設業法ではICTによる遠隔施工管理などを前提に、専任配置が必要な現場の兼任を許容する仕組みを創設。具体的な兼任の要件を政省令で規定した上で年内に施行する。これと同時にICTを活用した現場管理を特定建設業者などに努力義務化し、公共工事入札契約適正化法(入契法)の改正で施工体制台帳の提出義務をICTで代替可能とする。
建設工業新聞 2024年9月20日
監理技術者や主任技術者といった現場技術者の専任制度の見直しは、国土交通省の有識者会議「適正な施工確保のための技術者制度検討会(第2期)」が2022年5月に策定した「技術者制度の見直し方針」に基づき措置する。専任技術者を必要とする請負金額4000万円(建築一式8000万円)以上の工事現場のうち、同1億円(建築一式2億円)未満の工事を対象に条件付きで兼任可能とする方向だ。
見直し方針ではスマートフォンやウェブ会議システムを利用し音声と映像で現場の状況確認や意思疎通を行えるICT環境や、実務経験1年以上の連絡要員を配置したサポート体制などの要件化を提案。建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用などで日常的な施工体制を遠隔把握することも求める方向だ。これ以外に▽兼任可能は2現場▽現場間が1日に巡回可能な範囲▽下請次数が3次以内▽人員配置などの計画書の作成・保存-などの条件設定を想定する。
5年前の法改正では監理技術者を補佐する制度を創設し、補佐する者を専任で置いた場合、専任現場の監理技術者に2現場の兼任を認めた。今回の法改正で兼任可能な制度のバリエーションが増えたことになる。さらに遠隔施工管理などの条件を踏襲する形で、営業所専任技術者による専任現場の兼任も可能とした。
建設現場の生産性向上を促すため、現場管理の効率化にも手を打つ。元請の特定建設業者と公共工事の受注者にICTを活用した現場管理を努力義務化する。特定建設業者には下請への指導も含めて努力義務化し、より幅広くICT活用を普及させていく。こうした措置を円滑に進めるための「指針」を国が作成し、情報共有システム(ASP)による元下間のデータ連携などの具体的手法を提示する予定だ。
公共工事で義務化されている施工体制台帳の写しの提出は、台帳作成が可能な入退場管理システムなどに発注者が直接アクセスして確認できる場合に不要とする。具体的な措置内容は省令で規定予定。CCUSの活用も念頭に置く。下請各社の情報を集約し台帳にまとめ、変更時にも都度提出するなどの業務負担が軽減され、元請の技術者の働き方改革につながる。