大阪万博と建設業法

 皆様こんにちは!!昨日、山口県行政書士会の支部総会で議長をさせていただいたんですが、思いっきりトチって赤面の至りの渡辺です。Youtube開設して喋る練習しなきゃかな…と本気で考えてます😅
 コロナ禍が明けて、総会の雰囲気もすっかり明るくなったと感じました。お堅いイベントでしたが、久しぶりにお会いしたいろんな先生方と色々お話ができて、とても充実した時間でした。

 イベントといえば。
 4月13日に開幕した大阪・関西万博。開催前の不要論もどこ吹く風、ニュースでは盛況な映像が流れています。世界の空気感を一度に触れられるイベントというのはなかなかないので、ぜひ行ってみたいと思っていますが、「序盤が一番混んでいる」「いや、終盤に進むにつれて混んでくる」と様々な予想があり、むむむ…いつ頃行くのがベストか、悩ましいです。

 そんな大阪万博ですが、開催当日はインド・チリなどの5か国の海外パビリオンが未完成で開館を見合わせていたそうです。現時点ではネパール以外は無事開館したとのことですが、開催したのに建物が未完成だったったなんて、ちょっと意外ですよね。

 なぜこのような状況となったのでしょうか。

価格変動の影響

 いくつもの原因があったと思いますが、ニュースを見る限り

  • 建設資材の高騰
  • 建設現場の人手不足
  • 無理なスケジュール設定

などが挙げられています。
 建設業界の人手不足は慢性的なものですが、今回の万博で特徴的な影響は「建設資材の高騰」だったのではないでしょうか。
 世界的なインフレ傾向で鉄骨などの資材価格が高騰し、それに輪をかけて人件費なども上がってるので、発注者側と工事請負企業側との間での調整が難航したのでは、と想像しています。

 建設業界では工期が数年に亘る案件もよくあるので、万博レベルのプロジェクトではなくても、街中でよく見る建設現場でも価格変動の影響の可能性はあるんじゃないか…と感じています。

建設業法の改正

 本格的なインフレの時代に入り、私たち一般市民も物価高を肌で感じるようになって久しいです。政府としても、適正な価格転嫁を推し進める施策が色々出てきています。
 その一環として、建設分野においては建設業法が改正され、昨年12月13日に施行されました。改正点はICT活用、技術者の専任義務に関する合理化など幾つかあるのですが、その中に価格変動に関する「契約書の法定記載事項の追加」があります。

 契約書の法定記載事項とは。
 建設業法は、まず「請負契約は書面で締結しなさい」と定めています(第19条第1項柱書)。建設工事は口約束での契約はNGなんです(実態はともかく、法律上は)。
 そして同項では、その契約書・注文請書などで記載しなければならない事項16項目を定めています。メジャーな項目として「工事内容」や「請負代金」「工期」などがあります。
 その記載しなければならない項目の中に「価格変動」に関する事項があるんですが(同項第8号)、法改正前は「価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更」という内容だったものが、改正法では「価格等の変動又は変更に基づく工事内容の変更又は請負代金の額の変更及びその額の算定方法に関する定め」という内容に改正されました。「額の算定方法に関する定め」が追加された内容です。

 ややこしいですね(苦笑
 つまり、鉄骨が高くなったら請負代金を上げる予定があるんなら「請負代金を上げるよ」だけでなく「どういう方法でその変更後の請負代金を決めるのか」ということも予め書面で決めておきなさいよ、ということです。

 建設業法がこのように改正されたので、契約書・注文請書などでこの内容が抜けていれば建設業法違反となります。すぐにペナルティが科せられるかどうかは不透明ですが、法令順守が重視されている昨今、無視はできません。
 コンプライアンス上もそうですが、今後も建設資材等の価格高騰は十分ありうる話なので、契約書などにこの項目を入れておけばトラブルの未然の防止に役立つのではと思います。


 建設業者のお客様の基本契約書を見ると、いまだに2020年の民法改正が反映されていない契約書も多いのですが、改正の周知が不十分なせいか、そもそも民法改正も今回の建設業法改正も知らない建設業者の方が圧倒的に多いです。とはいえ「知らなかった」では済まされないので、特に基本契約書等を結んでいる企業についてはちゃんと対応していないと将来問題が生じそうです。難しいところです。

 ぶっちゃけ、面倒だなーと感じる方の方が多いと思います。でも、今回の大阪万博のパビリオン未完成の一件を見ると、契約書に今回の法改正みたいな内容が組み込まれていれば、もしかしたら工期遅延の幅も狭まったのかも…とも思います。このインフレのご時世、予防の観点から考えてみる必要がありそうです。

 現在、基本契約書の見直し・変更のご依頼を1件お受けしているのですが、今後も不安にお感じの企業からのご相談があれば、民法改正まで遡ってご説明・ご対応します。
 このあたりの話は堅苦しくてややこしいので、なるべく平易な言葉で分かりやすく説明する能力が試されそうです。やっぱりYoutube開設して喋る練習をしなければ😅