経審の新加点制度「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」

 こんにちは!!渡辺です。今回は長文になりそうなので即本題です(笑

 今日のお題は「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」。愛称は「職人いきいき宣言」です。
 この自主宣言が経営事項審査(経審)の加点要素になるということで以前から気になっていたんですが、今日12月12日からこの自主宣言の受付が始まりました。
建設技能者を大切にする企業の自主宣言【愛称】職人いきいき宣言

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」とは

 建設業は社会インフラを支える重要な役割を担っていますが、建設現場で働く技能者の減少が続いていて、その役割を継続できる取組みの強化が急務となっています。

 そもそも、なぜ技能者が減少しているんでしょうか。
 建設業は昔から「3K(きつい・汚い・危険)の仕事」、若年層から人気の薄い職業といわれてきました。汚れやすい作業が多かったり、事故や怪我のリスクが高い職場環境ということもありますが、他産業と比べて労働時間が長く、週休2日を確保できない企業(現場)が多いというのがネックになっているように感じます。若手からすれば「給料もそこまで高くないのに、週2日休めないなんてキツすぎる」という意見が多いのではないでしょうか。
 こういった産業の特徴から、若手の就業者がなかなか確保できず、入社してもすぐ辞めてしまうということで、建設業界の若年層は減少傾向、業界全体としては高齢化が進んでいます。

 国交省はこの3Kのイメージを覆す新3K(給与が良い・休暇が取れる・希望が持てる)を推進しています。大雑把にいえば「建設業の担い手である技能者の処遇を改善する」といったところでしょうか。
新3Kを実現するための直轄工事における取組

 こういった流れから、建設業界では昨今「技能者を大切にして、建設業を就業先として選ばれる職業にしましょう」「建設業の就業者を安定的に確保しましょう」という動きが盛んです。
 改正建設業法が今日12月12日から完全施行となりますが、「不当に低い請負代金の禁止」「労務費の基準制度の導入」など、技能者の賃金水準の適正化を目指した改正が目玉となっています。また、近年認知度が上がってきた建設キャリアアップシステム(CCUS)も技能者の処遇改善を目的としています。
 今回ご紹介する「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」も、これらの取組みの一つと考えられます。

「技能者」とは

 ちなみに、よく「『技能者』と『技術者』の違いが分からない」というご質問をいただきます。

 ここでいう「技能者」とは、現場で直接的な作業を行う人(工事の作業に携わる人)をいいます。現場には出るが工事には携わらない人(単に交通整理を行う人など)は技能者には該当しません。

 また「技術者」とは、現場で施工管理を行う人をいいます。「専任技術者(配置技術者)になろうと思えばなれる人(資格をお持ちの方や10年以上の実務経験がある方など)」というイメージでほぼ大丈夫です。
 現場で作業をする人が資格等をお持ちの場合は「技術者」「技能者」どちらにも該当します。

自主宣言の申請方法・内容

 自主宣言の話に戻ります。

 自主宣言の申請方法ですが、先ほどの自主宣言サイトからオンラインで申請します。サイトから取り組む事項を選択したり、取組内容を入力したうえで申請します。

 申請者は、自身の立場を「元請事業者」「下請事業者」「発注者」のいずれかから選択するのですが、それぞれの立場において申請画面での入力項目が変わります。
 入力項目の例ですが、例えば元請事業者であれば

  • 下請事業者から提出される労務費、材料費等の内訳が明示された見積書の内容を考慮・尊重する
  • 技能者の適切な処遇を確保するための取組を行う

などがあります。
 下請事業者より元請事業者の方が、入力項目が細かい印象です。発注者の入力項目はグッと少ないですが、建設業者の方がこの立場で宣言することは少ないと思います。

 入力項目は非常に多岐にわたっているのでここで全てをご紹介することはできませんが、自主宣言サイトにサンプルが掲載されていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご覧ください。

「CCUSの取組み」が必須

 自主宣言項目を一通り見て特徴的に感じたのは、元請事業者も下請事業者も、CCUSに関する取組みが必須事項になっている点です。

 元請事業者であれば

  • CCUSを利用する技能者が就業履歴を蓄積できるよう、必要な環境整備に取り組む
  • 全ての現場において、CCUSを利用する全ての技能者が就業履歴を蓄積するよう、必要な環境整備や履歴蓄積の促進に取り組む

の何れかが必須の選択項目となっています。

 また、元請事業者・下請事業者ともに

  • 雇用する全ての技能者について、(CCUS)詳細型の技能者登録を行う

が必須の選択項目となっています。

 その他にも選択項目として、CCUSレベルを考慮した賃金支払や昇給などの取組事項が挙がっています。

 CCUSの詳細型登録やレベルを考慮した処遇などの項目を見ると、国交省としては「CCUSレベル判定(能力評価)」を推したいんだな」と感じます。CCUSレベル判定は経審でも加点要素になっていますが、まだまだ浸透していないと聞いています。国交省としては、この自主宣言を通じてもCCUSレベル判定を推進したいと考えているのだと思います。
 経審で高得点を目指す企業は、今後CCUSの取組み、特にレベル判定は避けられないだろうと感じます。

経審での加点

 建設業の皆さんが興味をお持ちなのは、「この自主宣言が経審でどんな風に加点されるんだ?」だと思います。

 経審ではW点(その他の審査項目(社会性等))で加点されることがほぼ決定の様ですが、審査制度改正は来夏に施行の予定とのことです。
 自主宣言による加点は5点になる見込みです。小さい様にも見えますが、総合評定値(P点)への影響とは異なりますし、経審を受審する全業種で加点となるのは大きいです。

 加点の要件や必要な申請書類ですが、現時点では明らかになっていないので何とも言えません。が、ちょっと予想してみます。

  1. 各取組では「取組開始日」を入力します。このような項目があるということは、経審の加点要件として「取組開始日が審査基準日前であること」などが条件になる可能性があるのではと想像しています。
  2. 必要書類ですが、宣言書類だけになる可能性があるのではと想像しています。
    取組要素が非常に多く、全ての取組を確認する書類を取り付けるのは(申請者も審査側も)かなりの負担になるのではと思います。
    現在の経審で加点事項となっている「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」ですが、必要書類は「必要な措置を実施した旨の誓約書」のみで、「全部の現場でカードリーダーを設置したよ」と誓約すればそれで加点となります(もちろん、ウソをついてはいけません)。
    自主宣言も似たような制度なので、似たような運用になるのではと想像しています。

 申請が始まった自主宣言ですが、よく分からない点もあります。特に経審での加点要件や申請書類はこれから検討される模様です。
 今後も最新情報をキャッチアップして、建設業者の皆さんへお伝えできるよう頑張ります!