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    建退共×CCUS/一括作業方式の試行開始/民間の退職金普及を期待

     勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部と建設業振興基金は7月29日、建退共の電子申請方式と建設キャリアアップシステム(CCUS)のデータ連携機能を強化した新バージョンの試行を始めた。元請企業または一次下請企業が、現場で働くすべての技能者の就業履歴情報を扱える「一括作業方式」を新設した。これを採用すれば、二次以下の下請企業はデータ連携に関連する事務作業がなくなる。大手ゼネコン数社の現場で1カ月ほど試行し、9月作業分から本格運用を開始する見通しだ。両システムの連携強化によって、民間工事現場への退職金制度の普及による技能者の処遇改善などが期待されている。
     建退共電子申請とCCUSの連携ではこれまで、被共済者を直接雇用する各事業主が事務処理を行う「下請個別作業方式」が運用されてきた。新たな方式では、元請企業か一次下請企業が一括して、傘下の下請けで働く技能者の就業履歴をCCUSからダウンロードし、建退共の就労実績報告作成ツールに取り込めるようになる。合わせて、工事情報ファイルを元請企業から下請企業に受け渡す必要もなくなる。
     新方式は「元請一括」と「一次下請一括」の2種類があり、元請企業が現場ごとに設定する。どちらを使うかは、当月末までにCCUS上で登録する必要がある。一度登録すれば翌月以降は不要。CCUSでは、一括作業方式の就業履歴を翌月10日ごろにダウンロード可能となる。
     また、建退共ツールに登録された就労実績情報をCCUSにフィードバックする「R(一覧データ登録)方式」も立ち上げる。現場にカードリーダーが設置されていなかったり、タッチ漏れがあったりした場合などに、一括して足りない部分の情報を補完できる。R方式は、リーダー設置が難しい小規模現場などで重宝しそうだ。システムは現在開発中で、直接入力方式と下請個別作業方式から近く適用開始し、一括作業方式は年内をめどに使えるようにする。
     手続きの流れによると、元請一括作業方式の場合は、元請企業がCCUSにログインし、現場契約情報CSVファイルをダウンロードして自分のパソコンに保存。次に建退共の就労実績報告作成ツールから出力する連携用データを、電子申請専用サイトにアップロードする。現場契約情報の登録が完了した以降は、毎月の就業履歴情報をダウンロード・アップロードする。
     一次下請一括作業方式の場合は、毎月のダウンロード・アップロードを 各一次下請企業が実施し、最後に元請企業がそれを取りまとめてシステムにデータを送る形となる。
     今後は、7月分の就業履歴データを活用し、大手ゼネコン数社の現場で試行する。試行現場は土木・建築、公共・民間などさまざまという。情報連携の精度や不具合の有無などを確認し、問題があれば直ちにシステムを改修する。試行後には、建退共ツールとCCUSの共通(合体版)操作マニュアルも公開する。
     建退共事業本部の岸川仁和本部長は「建退共の電子申請とCCUSの普及に向けた正念場を迎えている。カードタッチが退職金の積み立てにつながるという意識が浸透することを期待している。官民問わず、どこの現場でも退職金ポイントがたまるようになれば、技能者の処遇改善に大きく寄与できる」としている。

    建設通信新聞 2022年8月1日