厚労省/建退共制度の掛け金の在り方検討、退職金増へ幅広く議論
厚生労働省は、建設業退職金共済(建退共)制度の退職金を増やす仕組みの検討に着手する。掛け金の在り方を主体に幅広い領域が対象となる見通し。現行制度は日額320円の同一掛け金がベース。技能労働者の処遇改善として退職金の増額を求める意見が出ており、複数の掛け金を認めるような案がまとまれば、中小企業退職金共済法(中退法)の改正を伴う大掛かりな制度の見直しとなる可能性もある。
建設工業新聞 2024年10月30日
29日、労働政策審議会(労政審、厚労相の諮問機関)の勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会(山本眞弓部会長)が東京都内で会合を開いた。建退共制度の見直しを求めた長谷部康幸委員(全建総連賃金対策部長)の意見表明に対し、事務局の厚労省は「在り方は部会で議論することになる」(担当者)と応じた。同省は具体的な検討を同部会でも進めたい考え。
建退共制度などの特定業種退職金共済制度は、掛け金や退職金額を推計、検討する財政検証の時期を迎えた。前回(2019~20年度)から5年が経過し、同部会は24年度末に結果を取りまとめる予定。建退共制度の在り方も一定の方向性が示されるもようだ。
会合で長谷部委員は、週休2日の普及から「(日額単一では)退職金総額の減少が懸念される」と指摘。建退共制度の電子化手続きと建設キャリアアップシステム(CCUS)のデータ連携が進んでいることなどから▽複数掛け金制度の検討▽民間工事での運用▽CCUSとの連携強化▽さらなる加入促進-などに関する具体的な議論を求めた。予定運用利回りについて、前回の財政検証前の3%を上回る水準に引き上げる検討も要請した。
建退共制度を巡っては、掛け金の柔軟な設定や、1人に対する複数掛け金の設定を求める要望が建設団体から出ている。高額掛け金を選択できる一般中小企業退職金共済(中退共)制度に移動する労働者もいる。
勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部(建退共本部)は制度の利便性を高めるため、電子システムを改修中でCCUSとの連携も促していく。電子手続きの場合、複雑な掛け金設定が可能。掛け金増額による退職金の増加は、労働日数の減少が指摘される週休2日の定着の後押しにもなりそうだ。