CCUS100万人突破インタビュー・芝浦工業大学教授 蟹澤宏剛氏

【人材育成基金の創設提言//ビッグデータで能力評価】
建設通信新聞 2022年12月23日
「建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用し、業界全体で技能者を育成していくべきだ」と提言するのは、CCUS創設の構想段階から携わってきた蟹澤宏剛芝浦工大建築学部建築学科教授。100万人超えというスケールメリットを建設業界全体でどう生かし、次なるステップにつなげていくべきか。
建設業振興基金のまとめによると、11月末時点のCCUS技能者登録数は104万8086人で、21年の労働力調査で309万人だった全技能者数の3分の1に当たる。
蟹澤教授は「常時稼働している建設技能者は、200万-250万人程度ではないか。個人的には4-5割程度まで達したと見ている。未登録者の多くは町場の住宅工事で働く技能者であり、野丁場(大手ゼネコンなどが手掛ける大規模な工事)に関しては7割以上が登録済みという感覚だ」と分析する。
100万人という数字が持つ意味については「100万人が年間100日現場で働き、カードリーダーにタッチすれば1億人日という数字になる。このスケールメリットやビッグデータはさまざまな面で活用できる」と力を込める。
具体的にはCCUS利用料の一部を人材育成基金として積み立て、欧米の先進国にあるアプレンティスシップ(徒弟制度)のような制度の仕組みづくりを挙げる。同制度はさまざまな職種の未経験者らに、週末などを使って集中的にOFF-JT(職場を離れて行う教育訓練)を受けさせ、3、4年程度で一人前に育てるものだ。
「先進国でこうした仕組みがないのは日本だけと言っても過言ではない」と指摘する。日本でもかつては建設企業が設立した民間訓練校が各地にあったが、維持するのは容易ではなく、特にバブル経済崩壊後は価格競争が激しくなり、訓練校を運営する企業の多くが倒産したという。
こうした背景も踏まえ、「建設業界全体で面倒を見て、技能者を一人前に育てる仕組みにする必要がある。財源はCCUS利用料の一部を賦課金に充て、基金として積み上げれば良い。1億人日が稼働しているとすれば1円の賦課金で年間1億円、10円なら10億円の基金になる。少なくとも地方ブロック単位、将来的には各都道府県に施設があれば理想的だ」と強調する。
ビッグデータに関しては、能力の“見える化”への活用を提言。「建設技能者が働いた分のデータが蓄積され、客観的な評価に使える。けがをしたかどうかも分かる。そうした客観データを活用して職種別、レベル別の最低賃金が設定できれば良い」と展望する。
さらに「客観データによる能力評価は技能者個人の問題だけでなく、能力の高い技能者を社員として多く抱えている専門工事業も適正に評価されることにもつながる」と語る。
今後、CCUSをさらに普及拡大させ、活用していくためのキーワードに、SDGs(持続可能な開発目標)とカーボンニュートラル(脱炭素)を挙げる。公共工事は税金を使って実施するものだけに、発注者責任としてSDGsや脱炭素を考慮したものづくりが求められ、民間工事でも発注者である企業自体がこれらに取り組んでいるからだ。
こうした状況を踏まえ「特に脱炭素については生産性の向上なしには実現できないため、技術に裏打ちされた資格を持ち、現場の経験・実績も明確なCCUS技能者が担うことがポイントになる。こうした認識が官民の発注者に浸透することでCCUSの活用も拡大していくはずだ」と力を込める。

