業界全体で解決策探る/技能者の処遇改善/一人ひとりへ“行き渡り”焦点

技能者の処遇改善が岐路を迎えている。10年連続の公共工事設計労務単価の上昇や地方自治体を含む公共工事でのダンピング(過度な安値受注)対策で進展が見られる一方、いまだ年収水準は他産業に見劣りする。担い手の確保・定着が待ったなしの状況で、技能者一人ひとりへの賃金の行き渡りを阻害する“労務費ダンピング”をどのように是正するのか。建設業全体で解決への糸口を探る動きが始まった。 国交省は14日に開かれた中央建設業審議会の総会で技能者の処遇改善に向けた検討状況を報告した。若年層を中心とする新規入職者の減少という課題について、技能者の平均年収が全産業平均を大きく下回る一方、出勤日数は全産業よりも多いという現状を整理した。
建設通信新聞 2022年3月22日
将来の担い手の確保のためには技能と経験に応じた適正な賃金支払いや週休2日の確保が重要であるものの、民間工事で価格や工期のダンピングを防ぐ仕組みがなく、多重下請構造の中で労務費までもがダンピング競争にさらされていると分析した。
同省は労務費ダンピングを防ぐ手だてとして、「不当に低い請負代金」(建設業法第19条の3)の具体的な基準や労務費目安の国による設定、元請企業の個別技能者に対する評価の蓄積、設計労務単価を踏まえた建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別の年収目安の設定といった対応の可能性を投げかけた。
建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長は、CCUSを活用した標準単価設定に対して、「適正な賃金を流していって、それを見える化する仕組みは今までなかった。一緒になって頑張っていきたい」と表明した。
全国建設労働組合総連合の勝野圭司書記長も、設計労務単価水準の賃金が現場技能者に支払われるようにするための具体的な施策が必要との立場を示した。「CCUSのレベル別賃金目安の設定、労務費の見える化・標準化などによる不当に低い請負代金の禁止の基準の具体化の検討をお願いしたい」と述べた。
全国建設業協会の奥村太加典会長は、「労賃の単価の見える化、標準化のような取り組みによって、最低賃金を保障するという点では一定の効果がある。しかし、最低賃金に張り付いてしまうおそれもぬぐいきれない」と指摘した。「下限を線引きする限りにおいて、そこに張り付かないような取り組みも処遇改善には重要だ」と説いた。
学識者の視点として堀田昌英東大大学院教授は、米国やドイツ、スイスといった海外の事例を引き、「労務費でのダンピング競争ができない仕組みなっている国も数多くある」ことを紹介した。「CCUSを始めとする新しい仕組みによって、他国に準じるような仕組みが我が国でも可能なのであれば、検討する価値はある」とした。
民間発注者の立場からは三菱地所の谷澤淳一代表執行役執行役副社長が、「近年、過去にないくらい工事費が高い水準にある。これから少子高齢化を迎える中で、工事費が高いまま定着することには危機感を抱いている」とし、重層的な下請構造の是正を要請した。

