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    国交省が有識者会議を設置

    【重層下請など重いテーマ並ぶ/施策の方向性、検討を開始】
     国土交通省が、幅広い分野の委員で構成する有識者会議を立ち上げ、建設業を将来にわたって持続可能な産業にしていくための環境整備に必要な施策の検討に乗り出した。「資材価格の変動」「技能者の処遇改善」「重層下請構造」「技能者の賃金」と、一筋縄ではいかない重いテーマが並ぶ。2022年度内に取りまとめを目指すとしており、業界の未来を見据えてどのような方向性を示すことができるかに注目が集まる。
     持続可能な建設業に向けた環境整備検討会(座長・楠茂樹上智大法学部教授)の立ち上げは、6月の中央建設業審議会総会における国交省の問題提起が発端となっている。
     国交省は、最近の急激な資材価格高騰を踏まえ、請負代金額の変更が契約上困難なケースがある民間工事で、適切に価格転嫁できない状況が続けば、受注者の経営状況悪化や下請企業への支払いにしわ寄せが及ぶ可能性があるとの問題意識を示した。
     もう一つの問題点には、技能者の処遇改善と賃金を挙げた。建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した処遇改善の取り組みが進む一方、賃金の伸びは公共工事設計労務単価の上昇に追い付いていないとの意見があることを紹介し、原因の一つと考えられる重層下請構造の在り方を含めて、設計労務単価相当の賃金を技能者へ行き渡らせるための方策を議論する必要があるとした。
     こうした背景で設置した検討会について、国交省は建設業を巡る課題を深掘りする“勉強会”と位置付ける。そのため、公共発注や技能者、企業法務、競争法、建築、労働法、土木を専門とする幅広い分野の有識者7人に委員を依頼し、直接関係する受注者や発注者の団体を含めなかった。
     3日の初会合では、複数の委員から課題解決のアイデアが披露された。ある委員は技能者の賃金に関して、建設業になじみの薄い「表明保証」の考え方を紹介し、中央建設業審議会が作成・勧告する建設工事標準請負契約約款に盛り込むことを提案した。契約の当事者が相手方に対して特定の時点で一定の事実が真実かつ正確であることを表明し、保証するもの。M&A(企業の合併・買収)や知的財産の契約で多く見られるという。これを建設業に取り入れることができれば、工事の元請企業が発注者に対して適切な労務費を下請企業へ支払うことを契約上保証することにつながるとしている。
     別の委員は資材価格変動に関して、民間工事の契約にスライド条項が含まれていても、実際に受発注者間で請負代金額変更の協議がなかなか実施されないのは、発注者が社内や社外の投資家に対して請負代金額を増額することの説明をしにくいことが一因と指摘した。対応策として、契約書に盛り込む事項を示す建設業法第19条の見直しを提案した。資材価格の高騰に伴う追加負担を受発注者のどちらが負うのかを法定記載事項にすれば、受発注者間のリスク分担の明確化につながり、法律に基づくという点で発注者の説明しづらさも解消できるとの考えを示した。
     このほか、契約の透明性確保、重層下請構造の適正化に向けたCCUSの活用などを求める意見が上がった。国交省は「新たな論点をいただけた」(不動産・建設経済局)と受け止める。
     今後は実態を把握しながら議論を進めるため、9月の開催を目指す第2回会合で受発注者の双方をヒアリングする。特に発注者側は民間工事の状況を確認する必要があるため、不動産業界に出席を依頼する考えだ。

    建設通信新聞 2022年8月5日