MENU

    規制逃れの偽装一人親方 チェックリストで見抜き、雇用へ誘導

     国土交通省は、規制逃れを目的とした偽装一人親方問題に対する取り組みで、働き方自己診断チェックリストの活用と、不適正な一人親方を雇用契約に誘導するための取り組みの徹底に力を入れている。4月から建設業で時間外労働の上限規制適用が始まると、従業員の労働時間管理を手間と考え、本来雇用すべき技能者を一人親方と偽り働かせようとするケースが増える恐れがあるからだ。
     具体的には、一人親方が現場に入場する際に、チェックリストを活用し、偽装一人親方を見抜く取り組みを、元請け・下請け、発注者、関係省庁が一体となって進めている。国交省は今後、建設キャリアアップシステム(CCUS)などを活用して、チェックリストの確認をより簡便にできる方法も検討。厚生労働省と連携し、労働者性の判断に関する問い合わせ対応も強化していくとしている。
     チェックリストの活用は、一人親方対策を強化するために、国交省が2022年4月に『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』を改定し、明確に位置付けた。同時に、事業者に対して、一人親方の働き方の適切性を現場ごとに確認するよう促してきた。
     ただ、ガイドライン改定以降、チェックリストの活用状況を調べたところ、一人親方をよく従事させている建設業許可業者のうち、7割近くがチェックリストの存在を知らなかった。国交省の担当者は、元請けから下請けへの指導といった観点を含めて、チェックリストを一層周知・活用するための具体策が必要という。
     偽装一人親方は、雇用関係にないことを理由に無休・長時間労働を強いられたり、本来加入できる社会保険に加入できず、年金や雇用保険などの公的保証を受けられなかったりする懸念がある。労働者の権利と、業界全体の持続的で健全な発展に深刻な影響を及ぼし、建設業の魅力を著しく低下させかねない。
     業界の最優先課題となっている、将来にわたる担い手確保の取り組みにも反する。時間外労働の上限規制の適用を見据え、国交省は24年度以降に「適正でない一人親方」の目安を策定する。建設業者には、チェックリストを活用し不適正な一人親方を見抜き、雇用契約に誘導する取り組みの徹底が一層求められる。

    建設通信新聞 2024年3月4日